クラウセビッツ 強いリーダーの条件

クラウゼヴィッツ 強いリーダーの条件―「戦略の達人」になる! (リュウ・ブックス―アステ新書)
戦争論」という書をご存知だろうか。200年ほど前に書かれた、戦争とは、戦略・戦術とは、といったことをテーマに書かれたものである。
「戦争とは、我が意思を相手に強要するための力の行使であり、他の異なれる手段を交えて行う政治的な交渉の継続に過ぎない」というフレーズが有名だが、コレは戦争というものの本質を端的に表した言葉だろう。
で、戦争論では「戦争とは何ぞや」というところからはじめ、その戦争を指揮する指揮官の考え方について触れている。現在のビジネス環境はある意味戦争状態に酷似した環境とも言え、「戦争論」の中からこの厳しいビジネス環境を乗り切るリーダーとはいかなる人間であるべきか、を記している。

いくつか心に残る記述があったので、そのあたりを中心にメモしておく。

目的と手段を区別することで、戦略の本質は捉えられる

これはクラウセビッツではなく、マイケル・ポーターの言葉であるが、およそ人間の思考し行動する世界においては目的と手段の整合が肝要である。
「何のために、何をするか。」
目的と手段の不整合 = 「目的意識の欠落」「手段の目的化」がおこる。
手段が目的に対して「合目的的」であるか。その手段は実行可能性があるか。を常に確認する。

物事を適切にやるよりも、適切なことをやる方が重要である

こちらはP・F・ドラッガーの言葉である。
『やり方は良いが方向性が悪い』をとるか、『方向性はいいがやり方は悪い』をとるか。 → 『作戦(目標)の失敗は戦闘(手段)では補えない』
「有効性」と「効率性」 後者は考えられてきた。前者の思考が必要。

問題が発生した思考レベルで、その問題を解くことは出来ない

これはアインシュタインの言葉。戦争論的に言えば「1ランク上の指揮官の立場に照らして自分の任務を遂行せよ」となるだろう。
自分のみの立場ではなく、1-2ランク上の立場にたって大局的・戦略的にものを見なければならない。

人間というものは不完全な機能しかもっていないので、絶対的な最善の域に達することはできない

これはクラウセビッツの言葉。このくらいの開き直りをもって、巧遅よりも拙速を選ぶ必要があることもある。
「走りながら解決する経営(J・ウェルチ)」「ベストを考えるより、早くベターを実行する」
意思決定(目的設定)が迅速でなければ、その後の行動(手段)の迅速性は無駄になる。

ますますつのる暗黒の中でも内部の光明を燃やし続け、真実に導く知性が必要である。

迅速な意思決定には、本質を素早く見抜く、ということが重要である。
コレに必要なのは枝葉末節の知識ではなく、複雑なものを単純化する能力であり、知識の単純化、総体化、そして本質の抽出が必要である。
「経営者は先見性が必要といわれるが、そんなに先が見えるものではない。先といっても0.3歩先を行くことだ。0.3歩ならそう狂わない。そういう気持ちで先を見ることだ。」(佐治敬三

指揮官の決断だけは誰の助けも得られない

思考することと決断することには雲泥の差がある。
「リスクと責任を負って行う」という決断こそ、リーダーの唯一最大の役割であり、その前段階の思考を代行することは可能。
地位が昇るに従って無能になる人がいる。阻害しているのは「臆病」である。
「決断した内容の70%ほど当たっていれば、なるほどなということで皆ついてきてくれる。それがリーダーシップというものだ」(鈴木敏文