「無料化」が進むエントリーレベル製品--ソフトウェアビジネスに変化の兆し

Sun Microsystemsバイスプレジデント兼フェローであるJames Goslingはかつて、一般的なソフトウェア開発者はツールよりカフェラテに金をかけていると皮肉を言ったことがある。

 Goslingがそんな冗談を飛ばしてから2年が経ったが、ソフトウェア開発者がカフェインを摂取するのにつぎ込む金銭的な余裕は、以前より増えているようだ。

 さまざまなソフトウェア分野で、無料のエントリーレベル製品を提供することがにわかに慣例化しつつある。こうした傾向はプログラミングツールにおいて特に顕著で、無料で入手できる製品は実に数十万種にも及んでいる。

 IBMは米国時間1月30日、ソフトウェア開発者に狙いを定めた無料のデータベース製品「DB2 Express-C」をリリースした。DB2 Express-Cは同社の商用製品の簡易版で、2プロセッササーバにのみ搭載できる。

 最近ではOracleおよびMicrosoftも無料製品を発表して、「MySQL」や「PostgreSQL」などの自由にダウンロードできる既存製品がひしめくオープンソースデータベース分野に参入した。

 OracleIBMMicrosoftという企業向けデータベースプロバイダの三巨頭のこうした動きは、ソフトウェアビジネスの経済的側面に生じている変化を反映したものだ。無料のオープンソース製品が登場したことで、ソフトウェアビジネスにおける有力ベンダーはその事業方針の見直しを迫られていると、アナリストやソフトウェア企業の幹部らは指摘している。

 RedMonkのアナリストStephen O'Gradyは、「信頼性の高い無料のオープンソース製品を相手に競争を繰り広げている商用ベンダーは、ユーザーが製品を利用する際のハードルを低くしていかねばならないという大きなプレッシャーを受けるようになっている」と述べた。

 アナリストや企業幹部によると、データベースサーバを含むプログラミング関連ソフトウェアアプリケーション分野の大半で、こうした状況が見られるという。データベースサーバは企業向けアプリケーションの根幹となるもので、非常に高額であることも多い。だが、企業の選択肢に無料製品が入るようになり、ビジネスによい影響がもたらされていると、ソフトウェア企業の幹部は話している。

 IBMOracleMicrosoftは、開発者の関心をオープンソース製品から自社製品に向けさせるために、データベース製品の無料版をリリースしていると、企業幹部らは言う。またこうした取り組みは、3社の顧客基盤を拡大させる可能性もはらんでいる。